フリーランスになって、こんなに毎日ユルいと思わなかった話。
起業というと大げさですが、フリーで映像の仕事をし始めて2カ月ほど経ったのでおおまかに近況を書いてみます。
今の生活をざっくり言い表すならば、「フリーランス1/3、学生1/3、リタイヤ1/3?」という感じです。あまりガツガツとは働いている感じはないですね。編集などの作業も、実は意識的に18時にはやめるようにしています。(撮影などが夜までかかる場合には別ですが)
朝は目が覚めた時間に起き(起き上がれるまで、1時間くらい布団の中でスマホで本を読む)、日中は作業をし、疲れたら休憩。
18時に「終業」した後は、近所のスーパーで買い物して夕飯作って食べて勉強したり友達と電話したり何やかんやしたりして、つい夜更かししてしまいつつの適当なタイミングで就寝。
日中でも作業が煮詰まったり気分が乗らなかったりすれば近所を散歩したり、普通に風呂とか入ったり、ギター弾いたりしてます。だからこれでフルタイムで働いているとはちょっと言えないような気がします。お爺ちゃんみたいな生活です。
ちなみに18時に作業をやめているのは、どこかにしきりを設けないとダラダラと深夜まで非効率なペースで作業してしまうからです。16時くらいに「あと2時間でどこまでいけるかな」的な感じで気分が自動的にピリっとするので、おススメです。その時間以降は勉強や趣味の時間と、はっきり意識を切り替えられるのもいいですね。
基本的に18時以降は毎日フリーダムなので、飲み会やイベントの誘いがあれば大抵ホイホイと出かけていきます。飲みついでに名刺配ったり、最近どんな仕事してるかを話したりするとなんかいい感じに人脈的なものが広がっていくみたいです。ここ2カ月で、本当に色んな方とお知り合いになりました。
人脈を広げる…というと何かガツガツした精神をイメージしてしまいますが、「何がなんでもこの出会いを仕事に繋げたるぞオラー!!」的な考え方はなんか疲れるだけな気がします。いくらガツガツしてても腕が悪けりゃ仕事頼みたくないし、「何がなんでも」で取った仕事ってなんか自然じゃない方向に転びそうですし。おすし。
どうせまだそんな大したもんになった訳でもなし、名刺を交換させて頂いた際は売り込むより先に相手に興味を持った方がいい事が多い気がしますね。駆け出しなので、ベテラン目線だとまた色々違うのかも知れませんが。
あと、技術も知識もまだ未熟なので、週末は東京に行って映像の学校に通っています。それと週一で専門学校の講師もやっていますが、こちらは今のところたまたましばらく休講が続いております。
それにしても…たった2カ月なのに、有難いことに色んな仕事をさせて頂きました。こないだはニホンジンのMV撮りましたし、他の会社さんからも短めのVTR制作とか、撮影だけの単発の仕事とか、いつぞやはコンサートの記録撮影からDVD納品、という事もやらせて頂きました。自宅作業のスタイルはユルくありつつも、我ながら「いかにユルくやるか」を日々追求しているだけあって納期は遅れないですね。
時間に余裕があると自分なりにサービス精神を発揮した作業が多少出来ますし、作ったものへの評判も「あー、ガッカリ!!」なんて声は頂かないのであとはスキルアップを目指したいものです。
えー。そんな感じです。
「もうちょっとシャキっと働いた方がええんかなぁ…」という気持ちと、「仕事がギュウギュウに来れば否が応にもシャキっとするんだし、今のうちにのんびり勉強でもしとくか」という気持ちが相入り交じった不思議な毎日です。
それではそろそろ。
今某撮影のロケ地を一生懸命探してるんですが、なかなか見つからない今井でした。
ここが良かった!実写版「美女と野獣」
現在劇場公開中で割と好評らしい実写版の「美女と野獣」を、仙台の映画館で観て来ました。
俺みたいな28歳小太り無精ヒゲほぼ無職みたいなもんがディズニーのラブストーリー観に行っていいのか、楽しめるのかというのはかなり気になる所でしたが、
蓋を開けてみればこれが思いのほか、28歳小太り無精ひげほぼ無職が観ても結構面白い映画になっておりました。
この実写版「美女と野獣」、ビジュアル面では旧アニメ版を忠実に再現しつつもストーリーの内容には結構オリジナル要素が盛り込まれていました。
そのオリジナル要素で、個人的に「ここが良かったなあ~!」と思った所を以下に挙げていこうと思います。
※実写版は当然ながら初見、アニメ版もむかーし観たきりなので所々間違いがあるかも知れません。その際はガンガン突っ込んで下さい。
※めっちゃネタバレしているのでご注意下さい。
ネタバレなんでちょっと空白を挟んでおきます。
さて今回の美女と野獣、何がよかったかって言ったら「実写版のオリジナル要素が非常にちょうどよく、バランスが絶妙だった」という所でしょう。
実写化作品というとよく残念な例として「余計な要素を加えて原作の良さをブチ壊し」パターンと「漫画・アニメだったから成立した内容をそのまま実写化してサムくなる」パターンが取り沙汰されます。
ところがそのあたり、さすがは世界のディズニーと言うべきか。
今回の実写版「美女と野獣」は、おかしなオリジナル要素も、旧作通り過ぎて興ざめという事もありませんでした。
「ビジュアル面は、VFX技術でアニメ版を見事に再現」「脚本面では、ただ実写化しては薄っぺらくなりそうな所をオリジナル要素で補強、オトナも観れるドラマ作品に」という非常にちょうどいい感じになっておりました。
衣装などは本当にアニメ版そのままですし、お城の喋る調度品などもディテールこそ異なれど「そうそう、これこれ」と言いたくなるザ・実写化とでも言うべき再現度。
ダンスシーンも、あの黄色いドレス着たベルとあの青いタキシード来た野獣があの部屋であの踊り方してるんで、あれ旧作ファンは「…ほわぁぁぁぁぁ…!」でしょうね。
で、そういう見た目の要素はバリッバリの再現映像だったとして、先ほど触れた脚本面での「補強」がどういうものだったか。
個人的に「こりゃいい!」と思った「補強点」を3つ挙げようと思います。
①野獣をはじめとした城内の泥臭い企業的なノリ
この映画、終始野獣が「ガオー!!」と吼えているようなおっかない系ファンタジー全開でいくのかと思いきや、野獣の恐ろしさがフィーチャーされるのはせいぜい初登場から5分程度。
その後の城内での野獣はぶっちゃけ、「ヘソを曲げると厄介だけど何だかんだで慕われていて、気付けば年上の部下たちにフォローされている社長」みたいなノリです。(まぁ、王子ですからね。)
重い牢獄の扉を前に「もう二度とその扉は開かんぞ…」などとせっかく重々しく宣言したのに、そのすぐ後に燭台の人がその扉をアッサリ開けた挙句
「あー、『もう二度と…』とか言ってたでしょ?あるあるうちの代表そうなんすわーサーセンww」とか言ってるし。(言い回しは違うけど)
この一言で、もう野獣は野獣じゃないです。ただの「社長」です。
一方で時計の人は「ちょっと今回は上(野獣)に一言モノ申したりますわ」的な粋がり方を城内の家臣たちの前ではしつつ、野獣がそばに来ると思うと途端にビビり出したり。なんだお前、ただの中間管理職か。
城の人々(調度品だけど)が和気あいあいと笑いあっている声を聞きながら、「(上司である)俺が近くにいくとあの笑い声が止むんだよな…」的な愚痴を野獣がベルに漏らしたり…。
会社か。
会社だこれ。「株式会社野獣」。
なにこの、中世の鎧をまとった現代的な職場の人間模様。
旧作のアニメ野獣にも「家臣たちにアドバイスされるお茶目シーン」はあったけど、実写じゃまさかここまで日本の中小企業を取材して取り入れたような人間模様を強調してくるとは。
でもその結果、野獣と城内の人々の人間関係がとても泥臭くも愛らしくなっています。そして城内の人々にどんなに心配され愛されていても孤独な野獣の姿が、「だって社長だから」というリアルさによってものすごい説得力を得ています。
この辺の表現の機微の違いは、実写映像である事と相まってすごく良かったと思う所です。
だってこんな人たち、助けてやりたくなるでしょう!?
②ベルと野獣、二人の両親に関するエピソードの追加
なぜヒロインのベルに母親がいないのか、野獣がどのように育てられてああいう性格になったのか。そういう事が劇中でかなりはっきり描かれていました。
この辺りが今回の一番目立つオリジナル要素ですが、これが個人的には大ハマリ。
互いの両親の話がかなり明らかになった事で、ストーリーがかなり普遍的で深みのあるものに変身していました。
旧作アニメでは確か「意外といい人だったし、私みたいに本とか読む人だし惹かれちゃった」みたいな比較的シンプルな恋愛模様だったのに対し、今回ベルと野獣は互いの家庭の話にかなり踏み込みあいます。
そしてそれによってベルと野獣との恋愛が単なる男女の惹かれ合いだけではなく「各々の家庭に起きた歪みを、下の世代同士で乗り越えるための愛」とも読み取れるというね。
ついでに見事だったのが、あのラストのダンスパーティーシーン。
ベルと王子(元野獣)の幸せな様子だけでなく、色んなペアが色んな愛情を抱えながら踊っている様子が映されていて、より作品のテーマに普遍性を持たせたかったのではと感じました。
冒頭の嫌な感じのパーティーシーンとの対比がすごいっす。恐ろしいわディズニー …。
③やたら殺伐とした村。
アニメ版とは、ベル達の暮らす村の様子もだいぶ変わっていましたね。
アニメでは「本の中のファンタジー世界に溺れているベルを少々風変りとしつつも、皆それなりに仲良く平和に暮らす村」だったのが
実写では「『読書(=知性)など要らねえ。特にオンナには文字を教えるな』的な価値観が根強く、一人先進的なベルを冷笑・迫害する狭苦しくてひどい村」になってます。
要するに村全体がバカの国になってる訳で、その中でも影響力のある強いバカが悪役のガストン、っちゅう訳です。
そんな中、ガストンの相棒(というか手下)のル・フウは逆に賢くて健気な奴になっていました。
ガストンを励ますために酒場にいる人々にこっそり小銭を渡したり、村人を扇動するガストンの背中を見ながら「野獣は俺の目の前にも…」などとこっそり口ずさんだり…。おいどうしたル・フウ。IQ上がってんぞ。
そんなル・フウの賢さが、逆に村全体のバカっぽさと閉塞感を強調しています。
自分よりバカなガストンに媚びてまで立ち位置を作らなきゃいけない村って事ですからね…。中学校の教室みたい。
(追記)
今回の実写版、「ル・フウは実はゲイで、ガストンに惚れていた」という公式設定があった事を記事執筆後にTwitterでお知らせ頂きました。
なるほどそれを踏まえると、上記の「ガストンに媚びていた」という考え方は誤りですね。失礼失礼。
で、こういった村の変更点も結構いい方向に働いていて、ベルの「誰も分かっちゃくれない」「ここではないどこかへ行きたい」感じが同じく孤独だった野獣との共感・恋愛に強く繋がっています。
更に、城の呪いが解けた後のラストのダンスパーティでは、村の人々に交じってパートナーと楽しそうに踊るル・フウの姿が!
「抑圧されていた知性」が解放された事の象徴という事なんでしょうか。ル・フウのハッピーエンドは見ていて朗らかな気持ちになりました。
そういえば、呪われた城の中に広大な図書室があった事や呪いが解けた後のダンスパーティーに村の人々が参加していた事を考えると、
呪われていたのは城だけでなく村もだった、とも考えられますね。あの魔女は、バカな人間たちがもう一度愛と知性に目覚めるのを待っていたのかも知れません…。
さて、よかったと感じたオリジナル要素は以上です。まとめると、
①呪われた会社(城)の上司・野獣とそれを慕う部下たちの、企業的で泥臭くも温かな人間関係
②ただの男女間の恋愛話にとどまらず、家と家の物語にまで踏み込んだ事で深みと説得力を増したラブストーリー
③抑圧された知性の解放により、本当の自由を手に入れた村(というかル・フウ)
これらの追加要素により、今回の美女と野獣は実写映像になっても鑑賞に耐える素晴らしいドラマに仕上がっていたように思います。
実写という表現の器にふさわしくなるよう必要な分だけ物語の厚みを増したという感じで、これ実写化のお手本と言ってもいいんじゃないですかね。
このバランス感覚、何度でも言いますがほんとすげーなと思いました。面白かった。
最後にちょっとだけ不満だった所も挙げておくとすれば、次の2点でしょうか。
【その1】
捕まった父親の身代わりにずっと城に残ると申し出ておきながら、入るなと言われた部屋に勝手に入ってちょっと怒鳴られたからと城を飛び出すベルの行動はちょっとヤバい。
しかもその後オオカミに襲われて、身を挺して助けてくれた野獣に「アナタのせい!」とか言ってるし…頭が疲れてたんか?
【その2】
ダンスシーンの後の野獣の告白、すげー自信なさげで遠まわしだったのはシャイボーイっぽくてよかった。
その後父親が心配なベルを気遣い、自分が人間に戻れなくなるのを覚悟で城を去らせたのもカッコよかった。(昭和の渋い俳優かお前は。)
でもその後、「あの子めっちゃ好き!」「また来てくれたらなー!」的な歌詞を城中駆け巡りながら大声で唄うのはさすがに情緒がなさすぎ。いやいい曲だったけども。
いくらミュージカルと言えども、もっとシンミリした「これで良かったのだ…これで…」的な内容の曲で良かったんじゃないのか?
以上、長くなりましたけれども感想でした。