男だけど「いつかティファニーで朝食を」を最近読んでる

 

相変わらず福島の実家でゴロゴロしている。

 

去年から「マンガBANG!」というアプリでほぼ毎日漫画を読んでいて、1日に8話(加えて動画広告を観ると+5話)まで無料で読めるシステムなので割といい暇つぶしになる。

 

最近読み進めているのが「いつかティファニーで朝食を」というマキヒロチさん作の漫画。

グルメ漫画とストーリー漫画を両立させたコンセプトの作品で、主に東京で暮らすアラサー女性たちが様々なお店の洒落た朝食に元気付けられつつ、恋に仕事に家庭に色々と悩みつつも暮らしていく話だ。

 作中に出てくるお店やメニューは実在のものだそうで、素敵グルメ情報も知りつつ登場人物達ののリアルな心情に共感出来るということで人気なんだそうな。

 

実はこの「いつかティファニーで朝食を」、無料分の冒頭3話だけは少し前に読んでいた。が、当時は登場人物の行動や考え方に対する強烈なアレルギー拒否反応に見舞われ、しばらく続きを読む気がしなかった。

 

毎晩遅く帰ってくる同棲中の彼氏と生活リズムも価値観も噛み合わない!という状況でフラストレーションが溜まった結果、「素敵な朝食を食べる生活をしたい、自分に正直に生きたい」という衝動的な理由で一方的に別れを告げ部屋を出て行く主人公。自分からバッサリと別れを告げておいてさめざめと泣いて落ち込む。

そんな彼女と、仲の良い同年代の友人が築地市場で一緒に朝食をとる。最近の主人公の悩み?に同調しつつ、友人は友人で「不倫の恋に疲れちゃったぁ…」などと独りごちる。え。不倫してんの。

んで、ニコニコして飯食ってる築地のおじいちゃんを眺めながら「あんなキラキラ充実した人生送りたいな☆」などとのたまう。

 

「…この漫画の読者って、こんなおぞましいものに共感してんの?マジで?」

 

冒頭3話で表現されきった、いわゆるちょっとお花畑系女子の無自覚な身勝手さ。強烈な胃もたれが起きてしまい、読み進める事が困難になってしまった。

 

…けどまぁ、自分の感じた拒否感は作品のファンにしてみれば「何勝手にこちらのカルチャーに踏み込んできて、勝手にディスってんの」って感じだろう。すんません。

例えるなら男性向けエロ漫画をわざわざ女性が読んで吐気を催すようなもので、あくまで異文化を覗かせて頂くような気持ちならいいのかなと思って最近改めて続きを読み始めた次第。

 

今50話くらい読んでいるけれど、はじめほど強い拒否感は感じなくなってきた。アラサーならではの焦り感や自分探し感は分からなくはないかなー、とか、仕事で色々大変だったり、エゴイスティックな恋愛感情が頭をもたげるのは分かるなー、とか、自分なりに共感出来る所も出てきたので割と楽しく読んでいる。

 

ちょっといいかもと思い始めていた職場の後輩に彼女がいた事で、別にはっきり好きだった訳じゃないのに勝手にショックを受けて相手への態度が冷たくなったりとか、そんな彼とベタつき始めた職場の新人女にいい年してマウンティングしちゃったりとか。そういう「気持ちは分からなくはないがみっともない」主人公の姿には相変わらずのけぞってしまうけど、逆に言えばよくもこんなにエゴやジェラシーをゴリゴリに描いているなーと感心もする。

 

主人公は、どこか何かに向かって成長している訳でもない。「どこに辿り着くでもなく、ただ泳いでいたい」という。

さすがに自分の身勝手さに反省してる風の描写も時々あるけれど、それはただ突発的な自己嫌悪を定期的に感じているだけだ。そして落ち込んだ時は、またどこぞのオシャレなお店でなんかエビとかアボカドとかが挟まった名物ベーグルサンドなどを食べて「おいしい…」と元気を出してまたどうにかやっていく。

ぐちゃぐちゃになる度、「素敵な朝食」が心の軸を直してくれるといった所だろうか。

 

うへぇ…とは思うものの、それでは自分は彼女を嗤えるだろうか。傍からみたら、何度も同じような迷惑を周りに振りまいて、反省してる風の自己嫌悪に身を切るような思いをして、とりあえずうまい物を食ってどうにかやっていく。そういう点では何だか自分も全く変わらないような気もしてきた。ライフステージや働く場所や人間関係が変わっても、自分の本質的なみっともなさは変わらないもの。今日もエゴとジェラシーをぐるぐるさせつつ、何かを食べることで救われて生きている。

そういうことを、描いている作品なのかも知れないと最近は思う。「メシを食う事」と「厄介な自意識とどうにかやっていくこと」、これら2大テーマを自覚的にごった煮にした作品は、他に読んだことがない気がする。

 

別に熱烈におすすめしたい訳ではないが、自分の知り合いがどんな感想を抱くのか今一番気になる漫画「いつかティファニーで朝食を」。特にアラサーの人に読ませて「どう?」と訊いてみたい。

読んだらぜひ感想下さい。ファンからのクレームも可。